アマゾン等でのスペック偽装品について
アマゾン等で特に中国企業が販売しているドライブレコーダーには、中国製センサー使用にも関わらず「ソニー製センサー採用」とスペックを偽装して表記しているものがあります。
下は製造工場の協力を得て分解撮影した光学センサー組込み基盤の写真です。
実はアマゾンではこのようなスペック偽装品はめずらしくありません。ベストセラートップ10のうち7割が偽装品、という時もあるくらいです。ドラレコ以外にも例えばモバイルバッテリー等は顕著で、容量10000mAhと記載されていても実は中身は6000mAhしかない等は無名メーカー品ではごく当たり前と言えるほどです。
なぜこのような偽装が横行するかと言いますと、表示スペック通りであることを消費者側が確認することが非常に困難だからです。
確認するには(保証が無くなることを覚悟で)筐体を開けるか、正しいスペックのものと比較するしかありません。実際のところ使用に耐えないほど品質が悪いわけではないので、「こんなものか」と思って使用し続ける方が大半と思います。
当社は業務上多くの中国の工場と取引があります。その過程で、このような偽装がごく一般的に行われていることを工場自身から聞いて知りました。具体的にどの製品がどこの工場で製造されているかもおおよそ知っています。
念のため申しますと、製造している工場自身がこういった偽装販売を行うケースはまれです。アマゾンで販売している中国ブランドの多くは単なる商社で、製造工場のバルク販売品を問屋購入し、パッケージとホームページ上の表記のみを偽装して販売しています。
製造工場自身も実はこのような状況に心を痛めており、この文書を公開したのも彼らから「日本の皆さんに教えてあげてくれ」と言われたのがきっかけです。
レビューも偽装
なおこのようなスペック偽装にも関わらず、それらの製品のアマゾン上のレビューは非常に高評価であることがほとんどです。なぜかというと、そのレビューもまた偽装で、サクラを大量投入しているためです。
Facebook等に多くのレビュー募集グループがあり、そこで「無料で製品をあげるから★5でレビューしてください!」という募集が日常的に行われています。
以前は中国人によるレビューだったため日本語がおかしくすぐ分かったのですが、最近は上記のように日本人による偽装レビューになっているため分かりにくいのです。またレビュワーは実際にアマゾンで買った上で、その後別ルートで返金を受ける仕組みのためにアマゾン側がサクラであることを検出するのも大変むずかしいため、このようなことが横行しています。
また最近ではサクラレビューを入れるために大量の自社買いを組織的に行えるサービスもあります。大量の自社買いによりベストセラーランキングにも入れられますから一石二鳥です。もちろんアマゾンにばれないよう、大量の別々のPCでそれぞれ1つずつ買い、その後レビューを投稿する仕組みになっています。
そのほか、他社製品に嫌がらせの虚偽レビューを入れ、評価の低下やアカウント停止に持ち込むセラーすら出てきています。(参考:大手モバイルバッテリーメーカーのAnker様による注意喚起のリリース)
皆さまはこのような状況をよくご理解のうえ、購入時には賢明なご判断を行うことをおすすめいたします。
実際にレビュー評点をよく見ていただくと、日本企業(サクラなし)は良くて★4つ前後、怪しげな安い中国ブランド製品(サクラあり)は軒並み★4.5前後の高評価になっていることにお気づきになると思います。
実際の映像の比較
実際にソニーIMX307センサー使用カメラと中国製センサー使用カメラ(アマゾン内ではソニーIMX307使用とうたわれている製品)の映像を比較してみます。
撮影はミラーカムSEで車内設置のリアカメラ、映像は無修正、同時刻同条件(雨天時)で撮影しています。
▼ソニーIMX307センサーの映像
後車のナンバー、後方の信号の色、横断歩道脇に歩行者がいることや後車運転席の様子も分かります。
▼中国製センサーの映像
後車のナンバーはほぼ読み取れず、後方の信号は色すらよく分かりません。横断歩道脇の歩行者や後車運転席の様子もほとんど分かりません。
▼ソニーIMX307センサーの映像
隣レーンの車の色、車種、ナンバーまで判別できます。
▼中国製センサーの映像
ナンバーはもちろん車種、色さえ判別できません。
▼ソニーIMX307センサーの映像
青信号の色がはっきり分かり、後方車両の運転者の様子も見えます。
▼中国製センサーの映像
光が白く飛んでしまい、信号の色も判別しにくい状況になっています。
▼ソニーIMX307センサーの映像
トンネル越しのバイクや車の様子がはっきり写っています。
▼中国製センサーの映像
トンネルの先の光で完全に白飛びし、車が後方にいることも分かりません。
このようにセンサーの性能差は走行映像の暗所の黒つぶれ、光の白飛びという形ではっきりと出ます。専門用語で「ダイナミックレンジ」と言いますが、つまり撮影可能な明るさの高低差の範囲が安物は狭い、ということです。
ただし明るい室内等、明度差があまりない環境ではその影響が出にくくなります。つまり店頭で映像を見比べてもさほど差がないように見えてしまうのですが、このように実際の道路上での違いは顕著です。
外観上の違い
写真は左から中国製センサー使用カメラ、台湾製センサー使用カメラ、ソニーIMX307センサー使用カメラです。
どれもアマゾンの中国セラーにより「ソニーセンサー使用!」として販売されているものです。
ソニー製センサーは発熱量が多く、多くの場合冷却のために外殻に放熱性の良い金属製シェルが使われています。対して中国製の安価なセンサー品は樹脂の軽量なシェルが使われています。
真ん中の台湾製センサーはソニー製IMX307センサーの模倣品として作られており、型番も307DXのため、基板上にも307と記載されています。性能も悪くないのですが解像感や発色等で本物には劣ります。最近は中国製に代えこの台湾製307DXを使っているケースが増えています。
その他のケースとしては、そもそもソニーの製品ラインナップにない型番のセンサー採用をうたっていたり、その製品の解像度と(使っていると言っている)センサーの解像度がまったく合っていない、という冗談のような偽装記載もあります。
なお2021年以降、世界的な半導体不足によりソニー製センサーは原価が非常に高騰しており、安価な製品で簡単に組み入れられる状況ではなくなっています。したがって安価な製品でソニー製センサー採用をうたっている製品は、スペック偽装の可能性がありますのでご注意ください。
他に最近多い偽装として、「4k解像度」と称していながら実際は2k以下のセンサーを使っているケースがあります。この場合は映像データ上は4kと同じ3840 × 2160となるのですが、実質的な解像度はセンサー解像度と同じ2k以下となります。一万円台で4kと称しているミラー型ドラレコはほぼこのパターンです。
なおリアカメラや独立式フロントカメラ(つまりケーブル経由で本体に接続されるカメラ)で4k解像度を実現するのは伝送帯域の問題でかなり困難で、2023年時点では市場に存在しません。つまり4k解像度をうたう製品はフロントカメラのみ4k、かつ本体カメラ一体型のもののみです。